桜チャートで中和滴定曲線を描く方法
本記事では、散布図や折れ線グラフを扱うツール「桜チャート」を使って、
中和滴定の pH–滴定量グラフ(滴定曲線)を描く方法を解説します。
強酸・弱酸と強塩基・弱塩基の組み合わせ 4 パターンを、ひとつの CSV にまとめて、
LEVEL(種類)ごとに色分けしながら比較できるようにしていきます。
中和滴定は高校・大学の化学実験で定番のテーマですが、
「毎回 Excel でグラフを作るのがちょっと面倒…」ということも多いと思います。
桜チャートを使えば、サンプルデータを貼り付けるだけで
4 種類の滴定曲線を一気に描画することができます。
この記事でできるようになること
- 中和滴定の pH–滴定量データを、1 つの CSV で管理する方法が分かる
- 強酸×強塩基・弱酸×強塩基・強酸×弱塩基・弱酸×弱塩基の 4 曲線を同時に描画できる
- 当量点付近の pH の違い(7、7より大きい、7より小さい)を視覚的に比較できる
- 授業・レポート・教材用に、きれいな滴定曲線の図を素早く用意できる
サンプルデータの前提条件
今回の記事では、実験値ではなく、典型的な滴定曲線の形になるように調整したモデルデータを使います。
前提条件は次の通りです。
- 被滴定液の体積:25 mL
- 被滴定液の濃度:0.10 mol/L
- 滴定液の濃度:0.10 mol/L
- X 軸:滴定量(mL)
- Y 軸:pH
- LEVEL(Type):酸と塩基の組み合わせ 4 種類
| Type(LEVEL列) | 想定の組み合わせ | 当量点付近の pH の特徴 |
|---|---|---|
| 強酸×強塩基 | 例:HCl(強酸) vs NaOH(強塩基) | pH ≒ 7 付近を急激に通過 |
| 弱酸×強塩基 | 例:酢酸 vs NaOH | 当量点で pH > 7 |
| 強酸×弱塩基 | 例:HCl vs NH3 水溶液 | 当量点で pH < 7 |
| 弱酸×弱塩基 | 弱酸 vs 弱塩基の一般的な例 | 全体的に変化がゆるやか |
サンプルデータ(CSV形式:X, Y, LEVEL)
まずは、桜チャートにそのまま貼り付けて使えるサンプルデータを用意しました。
列の意味は次の通りです。
Volume_mL:滴定量(mL)… X 軸pH:溶液の pH … Y 軸Type:滴定の種類(強酸×強塩基など)… LEVEL 列
以下の CSV をコピーして、桜チャートのデータ入力欄に貼り付けてください。
Volume_mL,pH,Type
0,1.00,強酸×強塩基
0,3.00,弱酸×強塩基
0,1.00,強酸×弱塩基
0,3.05,弱酸×弱塩基
5,1.18,強酸×強塩基
5,4.40,弱酸×強塩基
5,1.18,強酸×弱塩基
5,3.18,弱酸×弱塩基
10,1.37,強酸×強塩基
10,4.82,弱酸×強塩基
10,1.37,強酸×弱塩基
10,3.61,弱酸×弱塩基
15,1.60,強酸×強塩基
15,5.18,弱酸×強塩基
15,1.60,強酸×弱塩基
15,4.78,弱酸×弱塩基
20,1.95,強酸×強塩基
20,5.60,弱酸×強塩基
20,1.95,強酸×弱塩基
20,7.00,弱酸×弱塩基
25,7.00,強酸×強塩基
25,8.85,弱酸×強塩基
25,5.28,強酸×弱塩基
25,9.22,弱酸×弱塩基
30,11.96,強酸×強塩基
30,11.96,弱酸×強塩基
30,8.56,強酸×弱塩基
30,10.39,弱酸×弱塩基
35,12.22,強酸×強塩基
35,12.22,弱酸×強塩基
35,8.86,強酸×弱塩基
35,10.82,弱酸×弱塩基
40,12.36,強酸×強塩基
40,12.36,弱酸×強塩基
40,9.03,強酸×弱塩基
40,10.95,弱酸×弱塩基
このデータは、典型的な形をイメージしやすいように調整したモデルケースです。 実際の実験で得られたデータと置き換えても同じ手順でグラフを描けます。
桜チャートで中和滴定曲線を描く手順
1. データを貼り付ける
桜チャートの画面で、データ入力欄に先ほどの CSV をそのまま貼り付けます。
既に CSV ファイルとして保存している場合は、ファイルアップロード機能を使ってもOKです。
2. X軸・Y軸・LEVEL列を選択する
- X軸:
Volume_mL - Y軸:
pH - LEVEL(色分け列):
Type
LEVEL に Type を指定することで、
4種類の滴定曲線を自動で色分けして表示できます。
3. グラフの種類を選ぶ
中和滴定曲線は、散布図でも折れ線グラフでも表現できますが、
「点をつなげて曲線として見せたい」場合は折れ線グラフが分かりやすいです。
- グラフ種別:折れ線グラフ(Line)または散布図+線の組み合わせ
- 凡例:
Type列の値(強酸×強塩基 など)が自動で表示
4種類の滴定曲線の特徴を比べてみる
強酸×強塩基:典型的なS字カーブ
例:HCl を NaOH で滴定する場合のような、教科書に載っている一番基本的な滴定曲線です。
当量点付近(今回のデータでは 25 mL 付近)で pH が急激に変化し、
pH ≒ 7 付近を一気に通過します。
弱酸×強塩基:当量点で pH > 7
例:酢酸(CH3COOH)を NaOH で滴定する場合です。
滴定の途中では緩衝溶液として働き、当量点では共役塩基が残るため、
当量点の pH は 7 より大きくなります。
強酸×弱塩基:当量点で pH < 7
例:HCl を NH3 水溶液で滴定する場合をイメージした曲線です。
こちらは逆に、当量点付近で酸性側に寄るため、
pH は 7 より小さくなります。
弱酸×弱塩基:全体的に変化がゆるやか
弱酸と弱塩基の組み合わせでは、強酸・強塩基のような急激な変化は見られず、
全体的になだらかな曲線になります。
実験的にも、当量点の判定や指示薬の選択が難しいケースとして扱われます。
授業・レポート・教材への応用アイデア
- 授業中に、サンプルデータをその場で桜チャートに貼り付けて曲線を見せる
- レポートで「実験値」と「モデルデータ」を並べてグラフ比較する
- LEVEL を「指示薬の種類」に変えて、色の変化タイミングを重ねて表示する
- Excel や他の統計ソフトに CSV をエクスポートして、同じデータを再利用する
中和滴定は「pH の変化をどうイメージするか」が重要なテーマなので、
グラフ化して視覚的に理解することが大きな助けになります。
桜チャートを使えば、データ作成とグラフ生成の手間をかなり減らすことができます。
まとめ:桜チャートで中和滴定曲線を手早く可視化
- 1 つの CSV に X(滴定量)、Y(pH)、LEVEL(Type)をまとめて管理できる
- 強酸×強塩基、弱酸×強塩基、強酸×弱塩基、弱酸×弱塩基の 4 曲線を色分け表示できる
- 当量点付近の pH の違いを、1 枚の図で直感的に比較できる
- 授業・レポート・教材用の図を、桜チャートから素早く出力できる
中和滴定のような定番テーマほど、毎回のグラフ作成をどれだけ効率化できるかがポイントになります。
桜チャートとサンプルデータを組み合わせて、ぜひあなたの実験データの可視化にも活用してみてください。