自由落下と空気抵抗:なぜ重い物体の方が速く落ちると感じるのか?
本記事では、空気抵抗がない場合と空気抵抗がある場合の自由落下を比較し、 「重い物体ほど速く落ちるように感じる理由」を桜チャートのグラフを通して考えていきます。
ポイントは、空気抵抗がないときでも実際に 1kg / 5kg / 10kg の 3 本の線を用意して重ねることです。 そうすることで、「本当に 3 本ともぴったり同じ線になる=重さに依存していない」という事実を視覚的に確認できます。
1. 空気抵抗がない場合:重さを変えても同じ軌道をたどる
まず「空気が存在しない理想環境(真空)」を考えます。 この場合、物体には重力のみが働き、すべての物体は同じ重力加速度
g = 9.8 m/s²
で落下します。 重さ 1kg・5kg・10kg の物体を落としても、それぞれの速度は次の式で表せます。
v(t) = g t
x(t) = (1/2) g t²
ここで意図的に、「1kg」「5kg」「10kg」の 3 つの質量ラベル(LEVEL)を用意しつつ、 計算式はすべて同じにしています。 桜チャートで LEVEL 列に質量を指定すると、3 本のグラフが完全に重なって 1 本の直線に見えるはずです。
2. 地球ではなぜ「重い物体の方が速く落ちる」と感じるのか?
現実の地球上には空気が存在します。 空気は動く物体に対して、常に空気抵抗(抗力)を与えます。
空気抵抗のおおまかな特徴は次の通りです。
- 物体の速度が速いほど大きくなる
- 物体の形・断面積によって大きさが変わる
- 軽い物体ほど同じ抵抗でも減速効果が大きい
同じような大きさ・形の物体であれば、 軽い物体は空気抵抗の影響を強く受けてすぐに減速し、 重い物体はそれほど減速されないため、結果として「重い方が速く落ちる」ように見えます。
有名な「月面でのハンマーと羽の実験」では、空気がほとんどない月で、 ハンマーと羽を同時に落としてもまったく同じ速さで落下しました。 これは、地球での感覚が空気抵抗によるものであることを示しています。
3. 空気抵抗がある場合:重さによってグラフが分かれてくる
空気抵抗を考慮した自由落下は、例えば次のような「速度に比例する抵抗」を仮定したモデルで表せます。
dv/dt = g - (k/m) · v
g:重力加速度m:物体の質量(1kg, 5kg, 10kg)k:空気抵抗係数
右辺の抵抗項 (k/m) · v は、質量が大きいほど小さくなるため、
軽い物体は空気抵抗の影響を受けやすく、重い物体は受けにくいという性質がそのまま式に現れています。
実際に 1kg, 5kg, 10kg で計算した結果を桜チャートでプロットすると、 空気抵抗がある場合には 3 本の線がきれいに分かれて表示されます。
図1と図2を見比べると、 「空気抵抗がないときは 3 本が完全に重なる」のに対して、 「空気抵抗があるときは質量ごとに違うカーブになる」ことが分かります。
4. サンプルデータ(コピー式・空気抵抗なし/ありで分離)
ここからは、桜チャートにそのまま貼り付けて使えるデータを紹介します。 空気抵抗なしと空気抵抗ありで CSV を分けており、 どちらもワンクリックでコピーできるようにしてあります。
列の定義は共通です:
t[s]:時間(秒)v[m/s]:速度x[m]:落下距離LEVEL[kg]:質量ラベル(1, 5, 10)
桜チャートでは、例えば次のように指定して使う想定です。
- 速度グラフ:X 軸 =
t[s], Y 軸 =v[m/s], LEVEL =LEVEL[kg] - 位置グラフ:X 軸 =
t[s], Y 軸 =x[m], LEVEL =LEVEL[kg]
4-1. 空気抵抗なし(3 水準が完全に重なるデータ)
下のボタンを押すと、空気抵抗なし(1kg, 5kg, 10kg)の サンプルデータがクリップボードにコピーされます。 ページ上には生データは表示されません。
この CSV を桜チャートに貼り付け、X 軸を t[s]、Y 軸を v[m/s]、LEVEL を LEVEL[kg] にすると、
1kg・5kg・10kg の 3 本が完全に重なって 1 本の直線として表示されます。
4-2. 空気抵抗あり(質量によってカーブが分かれるデータ)
こちらは空気抵抗あり(1kg, 5kg, 10kg)のサンプルデータです。 同様に、ボタンを押すとフルデータがコピーされます。
同様に、X 軸 = t[s]、Y 軸 = v[m/s]、LEVEL = LEVEL[kg] としてプロットすると、
空気抵抗の影響により、軽い物体ほど早く速度が頭打ちになり、重い物体ほど速い速度まで到達する様子が一目で分かります。
5. まとめ
- 空気抵抗がない場合、1kg・5kg・10kg の 3 水準を用意しても、グラフは完全に重なる
- この「3 本重ねても同じ」という事実が、自由落下が重さに依存しないことの強い証拠になる
- 空気抵抗がある場合には、質量ごとに全く異なるカーブになり、重い物体ほど速く落ちるように見える
- 桜チャートと CSV データを組み合わせることで、こうした違いを授業やレポートで直感的に説明できる
本記事のサンプルデータを元に、抵抗係数や初速を変えたバージョンなど、 オリジナルの自由落下シミュレーションを作ってみるのもおすすめです。